危険物とは
一般に危険物と呼ばれているものは、爆発性や有毒性、放射性など社会生活のうえで危険性のあるものを言います。
っていうのは他にも刃物とか広い意味がありますね。
消防法上の危険物
それでは消防が危険物というと何になるかと言うと、消防法上では危険物を「危険物とは、別表の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」としています。(消防法第2条7)
別表はこちら
危険物は判別試験によって判定されるので、同じ物質でも形状や粒度によって危険物にならない場合があります。
常温(20℃)・常圧(1気圧)で液体か固体の物が危険物とされるので、気体の物は消防法上の危険物に該当しません。
危険物には単体、化合物、混合物があり分解の仕方なども違ってきます。
- 単体
1種類の元素からできている物質で分解できない。
硫黄:元素記号Sやカリウム:元素記号Kなど。 - 化合物
2種類以上の元素からできている物質で、別の物質に分解できる。 - 混合物
単体や化合物が2種類以上混ざっている物質。
危険物規制の目的
危険物は発火や引火しやすい危険性があるだけでなく、ほかの物質と混ぜたり接触すると燃焼が促進されるなどの危険性もあります。
危険物は一般に次の3つの危険性があります。
- 火災発生の危険性が大きい
- 火災拡大の危険性が大きい
- 消火することが困難
引火や発火しやすくて火災になりやすい物質です。
危険物自体が激しく燃えたり、周りの物が燃える手助けをしてしまいます。
燃焼速度が早くて消火が間に合いません。禁水性の物もあります。
そして危険物を規制する目的として次の3つがあります。
- 危険物の安全を確保
- 危険物が原因の火災などを予防
- 災害から公共の安全を守る
危険物の分類とその性質
危険物は消防法の別表によって化学的・物理的性質によって第1類から第6類までの6種類に分類されています。
第1類 酸化性固体
固体
この危険物自体は燃焼することはありません。
酸素を大量に含んだ固体で、他の物質を酸化させます。
加熱や衝撃、摩擦などを受けると分解して酸素を放出するため、可燃物と一緒に貯蔵してはいけません。
第2類 可燃性固体
固体
容易に着火して燃焼しやすい固体です。
低い温度でも引火して燃焼します。
燃焼速度が速いので消火は困難です。
第3類 自然発火性物質及び禁水性物質
固体または液体
空気中で自然に発火や可燃性ガスを発生させます。
多くの物質は両方の性質を持っています。
第4類 引火性液体
液体
炭化水素の化合物や混合物の引火性の液体です。
引火性の蒸気を出し激しく燃焼します。
第5類 自己反応性物質
固体または液体
酸素を含む物質が多く自ら燃焼できます。
加熱や衝撃などによる分解の自己反応によって発熱する。
爆発的に反応が進み消火が困難です。
第6類 酸化性液体
液体
この危険物自体は燃焼しません。
他の物質を酸化させる力が強いので、可燃物と混合すると燃焼を促進させる。
腐食性をもつものが多い
消防法別表
類別 | 性質 | 品名 |
第1類 | 酸化性固体 | 1 塩素酸塩類
2 過塩素酸塩類 3 無機過酸化物 4 亜塩素酸塩類 5 臭素酸塩類 6 硝酸塩類 7 よう素酸塩類 8 過マンガン酸塩類 9 重クロム酸塩類 10 その他のもので政令で定めるもの 11 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第2類 | 可燃性固体 | 1 硫化りん
2 赤りん 3 硫黄 4 鉄粉 5 金属粉 6 マグネシウム 7 その他のもので政令で定めるもの 8 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの 9 引火性固体 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | 1 カリウム
2 ナトリウム 3 アルキルアルミニウム 4 アルキルリチウム 5 黄りん 6 アルカリ金属(カリウム及びナトリウムを除く)及びアルカリ土類金属 7 有機金属化合物(アルキルアルミニウム及びアルキルリチウムを除く) 8 金属の水素化物 9 金属のりん化物 10 カルシウム又はアルミニウムの炭化物 11 その他のもので政令で定めるもの 12 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第4類 | 引火性液体 | 1 特殊引火物
2 第一石油類 3 アルコール類 4 第二石油類 5 第三石油類 6 第四石油類 7 動植物油類 |
第5類 | 自己反応性物質 | 1 有機過酸化物
2 硝酸エステル類 3 ニトロ化合物 4 ニトロソ化合物 5 アゾ化合物 6 ジアゾ化合物 7 ヒドラジンの誘導体 8 その他のもので政令で定めるもの 9 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
第6類 | 酸化性液体 | 1 過塩素酸
2 過酸化水素 3 硝酸 4 その他のもので政令で定めるもの 5 前各号に掲げるもののいずれかを含有するもの |
別表が作られた経緯
統一性のなかった別表
昭和63年に消防法が改正され平成2年から施工される前は、危険物は「別表に掲げる発火性又は引火性の物品をいう」だけで、同じような危険性を有する物質をその品名によって第1類から第6類までにグループ分けしていました。
貯蔵や取扱いを行う際の安全対策や消火対策は必要に応じて法令上違う取扱いをしていましたが、類ごとに明確な定義がされていたわけでもなかったので、混合割合や危険性の大小関係なく一律に規制されていました。
一律に規制されていたため、同じ類でも他の物質と同じように取り扱うことが適当でないことなどあり統一性にかける法律だったのです。
個々の物品の危険性に応じて合理的なものにするため、危険物について従前の6グループを基本として明確な定義をし、性質の統一性を確保することにしたのです。
危険物に該当するかどうかも従前は別表に掲げる品名に該当するかどうかだったため、同じ品名に属していたら危険性の大小関係なく同じ危険物として取り扱われていました。
危険物判定試験の導入
品名も純粋な物と混合物とで区別されておらず、混合状態によっては危険性に大きな違いがあるのに、同じ危険物としていました。
そこで個々の物品を正確に評価して、危険性を合理的に判定するため危険物の判定試験が導入され、類ごとに定めた試験により一定以上の性状を示すものが危険物とされました。
また、判定試験の結果から危険物の指定数量を定めたのです。
試験方法の導入により最終的に危険物かどうかを判定するのは試験の結果次第で客観的に判定できるようになったのです。
危険物を判定する試験方法
ここでは簡単に類ごとの試験方法を紹介します。
第1類
酸化力の潜在的な危険性を調べる
衝撃に対する敏感性を判断する
第2類
火炎による着火の危険性を調べる
引火の危険性を調べる
第3類
空気中での発火の危険性を調べる
水と接触して発火または可燃性ガスを発生させる危険性を調べる
第4類
引火性の危険性を調べる
第5類
爆発の危険性を調べる
加熱分解の激しさを判断する
第6類
酸化力の潜在的な危険性を判断する
まとめ
消防法上の危険物は常温(20℃)・常圧(1気圧)の時に固体か液体で気体はふくまれない。
判定試験の結果次第で品名が同じでも形状や粒度によっては危険物にならないものもある。
危険物は正しく使えば生活を豊かにする一方で、取り扱い方法を誤ると大きな被害を出すこともあります。