指定数量は、消防法で定められた危険物の取扱い、保管や運搬にあたって欠かせない概念です。
危険物取扱者だけでなく立入検査などを行う消防側も知っておく必要がある大事な数値なので、この記事をご覧になった機会に是非覚えてください。
指定数量と聞くと多くの人は危険物第4類の数量を思い浮かべるかもしれませんが、危険物1類から6類までのすべての物質に指定数量は定められています。
指定数量が1倍以上であれば許可申請や危険物取扱者が必須など消防法の適用を受けますが、指定数量が1未満であれば市町村の火災予防条例の規制で済みます。
当然消防法の方が厳しいので、会社として危険物を取り扱う場合には指定数量が1以上必要なのかどうか考える必要がありますね。
また、危険物はその危険性から即時使用停止命令なども発令可能なので営業にも影響が出てきます。
危険物の指定数量について
危険物の指定数量
危険物の指定数量という文字は消防法第9条の4に登場します。
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)・・・以下略
消防法第9条の4
政令で定める数量とは「危険物の規制に関する政令」の別表第3に定められた数量です。
例として一番身近な危険物第4類の指定数量は表のようになっています。
品名 | 性質 | 主な物質 | 指定数量 |
---|---|---|---|
特殊引火物 | 二流化炭素 | 50リットル | |
第一石油類 | 非水溶性 | ガソリン | 200リットル |
水溶性 | アセトン | 400リットル | |
アルコール類 | メチルアルコール | 400リットル | |
第二石油類 | 非水溶性 | 軽油、灯油 | 1000リットル |
水溶性 | 2000リットル | ||
第三石油類 | 非水溶性 | 重油 | 2000リットル |
水溶性 | 4000リットル | ||
第四石油類 | ギヤー油 | 6000リットル | |
動植物油類 | 10000リットル |
同一の場所で危険物を貯蔵し取扱う場合、貯蔵や取扱う危険物の数量をその危険物の指定数量で割算した値が、「指定数量の倍数」となります。
簡単に言えば同じ建物や場所で貯蔵、取扱っている危険物の量が「指定数量の何倍なのか」を表す数値のことです。
危険物の指定数量計算方法
それでは指定数量の倍数を計算してみましょう。
例としてイラストを見てください。
第二石油類の非水溶性は指定数量が1000リットルです。
つまり貯蔵、取扱いの数量が1000リットル以上となれば指定数量は1倍となります。
ドラム缶1本は通常1缶200リットルで計算します。
ですので、倉庫内などに軽油や灯油が入ったドラム缶を5本置くと、200✕5で1000リットルとなり指定数量が1倍となり消防法の規制を受けることになります。
他の例を見てみましょう。
今回は第二石油類(非水溶性)のドラム缶は3本、第一石油類(非水溶性)の20リットル携行缶を3缶置きました。
第二石油類(非水溶性)の倍率は0.6倍
第一石油類(非水溶性)の倍率は0.3倍
合計で0.9倍となり、消防法ではなく火災予防条例の規制となるのです。
よく立入検査のときに事業者側から言われることがあります。
「いつもドラム缶(容器)には満タンに入れていない」です。
容器内に危険物がどれだけ普段入っているかを相手の言葉だけで信じることは出来ないので、消防は容器の数に対しての数量を算出して指定数量の計算をします。
ドラム缶を置いているなら通常100リットルしか入れていなくても消防は200リットルで計算するってことです。
立入検査が終われば満タンにするかもしれませんよね?
危険物指定数量の倍数による違い
先程も書いていますが指定数量が1以上か1未満では大きく違います。
- 指定数量が1以上なら消防法の規制
- 指定数量が1未満なら火災予防条例の規制
指定数量以上になると許可申請が必要となり申請手数料や適合する消防用設備、貯蔵場所、危険物取扱者が必要になるなど経費もかかります。
指定数量未満であれば、貯蔵に適した場所を準備する必要はあるものの所轄の消防署への届け出と消火器1本程度で済み、危険物取扱者も不要です。
この記事のまとめ
危険物の指定数量について解説しました。
大きなポイントとして
- 指定数量が1以上なら消防法の規制
- 指定数量が1未満なら火災予防条例の規制
そして指定数量が1以上になると危険物取扱者が必要になり別途申請料など余分に費用がかかります。
事業所としてどうしても指定数量以上の危険物を取扱う必要があるなら仕方ありませんが、そこまで必要でないなら指定数量の倍数が0.99999…になるように調整した方が良いでしょう。
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