救急出動の件数は年々増加しています。
総務省消防庁によると
平成15年には全国で約480万件だった救急出動が平成28年には約621万件まで増加しています。
高齢化社会に進んでいて、救急が必要な人も増えているのは理解できます。でも、件数から計算すると1日平均約1万6千件出動して、5.1秒に1件出動していることになりますが、実際に呼んだことのある方はどれぐらいなのでしょうか?
タクシー代わりの利用
救急隊として出動していた頃に遭遇したタクシー事案などを何件か紹介しましょう。
- 「腰が痛く動けない」・・・玄関前で入院の準備をして待っていた。当然歩いて救急車に乗車。
- 今日病院に行く予定だったけど、タクシーを使うとお金がもったいないので救急車を呼んだ
- 「子供が指先を切った」・・・紙で少し切っただけで出血も止まっていた
- 「倒れて意識がない」・・・酔っ払って寝ていて、一緒に飲んでいた人が困っただけ
- 蚊に刺されたみたいでかゆい
- 「全身が痛い」・・・日焼けして赤くなっていた
- 救急車で行けば早く診てもらえると思った
- 「不安」・・・誰かに話を聞いてほしかった
- 「子供が30分くらい泣き止まない」・・・到着時は泣き止んでて救急車はいりませんと言われた
- 「病院に連絡したら救急車で来てくださいと言われた」・・・病院に確認したら、救急車で来てくださいとは言っていなかった
- 「ベッドから落ちて動けない」・・・ヘルパーさんに連絡がとれなかったから呼んだ。ベッドに上げてくれたら大丈夫
以上のように、ちょっと思い出すだけでも、たくさん出てきます。
タクシーとはちょっとニュアンスが変わってくるかもしれませんが、常連さんもたくさんいました。
週に何回も何回も救急車を呼ぶ人とか転院搬送法を1日に何度も呼ぶ個人病院とか・・・




問題点
タクシーのようにたくさん救急車はありません。タクシー代わりに利用されていると問題が発生してきます。
それは、救急車が通報から現場到着するまでの時間がどんどん伸びていることです。
平成28年の救急車到着までの時間は平均8.5分です。20年前は5分とか6分とか言っていたのに、8.5分になってます。
あくまで平均なので、遅い時には20分以上もかかることもあるのです。
重症な傷病者にとって1分2分はとても大切な時間です。その時間がタクシー代わりに利用する人たちによって奪われることがあってはいけないと思うのです。
救急車利用の有料化
救急車の利用するときに、有料化の話は過去に何度もでて今も検討されています。
病院受診後に「軽症と診断されたら救急車の料金を払うようにしたら良いのではないか」とか「一律いくらかの料金を取れば良いのではないか」とか意見はたくさんあります。
そもそも救急車が無料で利用できるのは、昭和38年の救急業務法制化のときに、消防審査会で「救急業務に要した費用は、徴収しないものとすること。」とされたからです。
救急業務は消防の任務のひとつなので、料金が発生しないようにもされました。
有料化への問題点
有料化にしてもタクシー代わりに利用する人は利用するでしょう。きっとその人たちは



このようになるのが想像できます。
それに、料金を払わないといけなくなると思い、本当は救急車が必要な症状であってもためらったりするケースが出てくることも想像できるからです。
特に無料のいまでも田舎のお年寄りに多いのが、救急車を呼んだら迷惑かけるからと我慢して症状が悪くなっていることがあります。
有料化をすることで問題が出てくることもあるのです。
#7119で相談してみよう



救急車を呼ぶべきかどうかを相談できる電話番号があります。#7119(救急安心センター事業)です。
急な病気やケガをしたときに、救急車を呼んだほうがいいのか、今すぐ病院に行ったほうがいいのかなど迷ったときに、専門家から365日24時間、電話で相談してアドバイスを受けることができます。
まだ#7119は全国に普及していないので次の都道府県と一部の市のみの利用になります。
- 北海道札幌市周辺
- 宮城県
- 新潟県
- 埼玉県
- 横浜市
- 東京都
- 奈良県
- 大阪府
- 田辺市
- 神戸市
- 福岡県
山形県、栃木県、千葉県、香川県では#7119以外の利用番号がありますが、24時間体制ではありません。
- 山形県 小児#8500 大人#8000
- 栃木県 小児#8000 大人#7111
- 千葉県 小児#8000 大人#7009
- 香川県 小児#8000 大人087-812-1055
午後7時から午後10時まで
午後6時から午後10時まで
平日 午後6時から午後11時まで
日・祝日 午前9時から午後11時まで
午後7時から翌朝8時まで
#7119での相談は無料ですが、通話料は利用者の負担になります。
まとめ
救急件数は今後も増え続けていくことが予想されます。件数が増えるということは、救急車が到着するまでの時間もどんどん伸びるということです。
救急車の利用を有料化してタクシー代わりの利用を減らすという考えの前に、ひとりひとりが救急車の利用について考える必要があると思います。
救急車を利用するべきか迷った時は#7119という相談窓口もあるので、利用できる地域に住んでいる方は相談してみてはどうでしょうか?