火災の時に消防が消火の為に使用するものは主に水ですね。なぜ水を使用するのかご紹介します。
まず物が燃えるための4要素を知る
物が燃えるためには、可燃物(燃える物)、酸素、点火源(熱エネルギー)この3つが必ず必要になり、3つが継続して燃え続けることを合わせて燃焼の4要素といいます。
キャンプで薪(可燃物)にマッチやライター(点火源)で火を点けるのとイメージすると分かりやすですよね。
酸素は普通ありますね。
身近な火が消える例
- ガスコンロのコックを閉じる
- アルコールランプに蓋をする
- 火に水をかけて冷却する
燃える物(ガス)を止めてますね。
アルコールランプの消し方は酸素を遮断して窒息消火する代表例です。
水をかけて冷却して熱エネルギーを奪います。
消火に水を使う理由
火災は物が燃えて熱エネルギーを発生させますよね?その熱エネルギーを効率よく奪って、なおかつコストにも優れているのが水なのです。
熱エネルギーを奪う水
水は熱エネルギーに触れることで、燃焼の3要素の1つである熱エネルギーを奪い取るという優れた能力があります。
熱エネルギーがなくなれば、3要素のトライアングルも崩れるので燃焼も継続しなくなるのです。
水は摂氏4℃の時が一番体積としては小さく、水温が上昇するにつれて体積も大きくなります。
熱エネルギーを奪って水温を上昇させても、そこにあった総エネルギーはなくならないので、奪ったエネルギーを水は体積を増やすことに使うのです。
水温が上昇して100℃になり水蒸気に気化するとき、水の体積はおよそ1000~1700倍に膨張すると言われています。
放水は水の塊が直接飛んでいるのではなく、水の粒がたくさん飛んでいます。その粒ひとつひとつが熱エネルギーを奪い、水蒸気に気化したとしたらどうでしょう。大量の熱エネルギーを奪うことになります。
そして熱エネルギーが高ければ、その分膨張率も比例して高くなるので火災最盛期の温度1000~1200℃になれば水粒子は2000倍、3000倍、4000倍と膨張率も跳ね上がり大量に熱エネルギーを奪うことになるのです。
コストに優れほぼ無害な水
私たちが住んでいる地球は地表の約70%が水で覆われています。また日本は幸せなことに豊富に水が存在していて、水道もほとんどの地域に提供されています。
水道がなくても川や海といった自然の水を使用することもできるので、安く使うことができます。
それに水は他の消火薬剤などに比べてほぼ無害です。今でこそ無害な泡消火薬剤などが開発されていますが、まだ有害な泡消火薬剤も存在していて、使用後は流れないようにして中和するなどの措置が必要です。
それら有害な消火薬剤に比べたら水は安くてほぼ無害なので、コスト的にも優れていますね。
進化するノズル
ノズルとは放水するとき、先端についている水が出る部分を言います。
いまから10年前ぐらいまでは、私の勤めていた消防本部も旧式のノズルで、先端を回すことで放水したり止めたりするノズルでした。
それが、車両の更新に併せて高機能のガンタイプノズルに変わっていきました。
なぜ昔からのノズルから高機能のガンタイプノズルに変化していったかと言うと、ガンタイプノズルは放水のときに出る水の粒子を今までよりも細かくして、より効率よく熱エネルギーを奪い取ろうという考えから誕生したからです。
まとめ
なぜ消火に水を使用するかは、熱エネルギーを奪う能力に優れているからと、ほぼ無害でコスト的にも優れているからです。
水よりも消火能力の高い消火薬剤も存在しますが、一般の建物火災で使用していたら消防予算はすぐに無くなってしまいます。
これからも消防の消火は水を使用するのが基本でしょうが、ノズルの進化などで効率よく消火できるようになってくると思われます。