消防職・団員に知っていて欲しい火災後除染のこと

日々市民の安心安全を守るため火災・救急・救助・予防などの勤務お疲れ様です。

消防職・団員の皆さん、そして消防士を目指している皆さんに、どうしても知っておいて欲しいことがあります。

それは火災現場での汚染についてです。

これを知っていないと、皆さんだけでなく家族の健康も蝕まれていきます。

火災現場は汚染されています!それを認識してください。

目次

火災現場で汚染されている

日本の消防では、火災現場で隊員が汚染されている認識があまり浸透していません。

むしろ煤だらけになった顔や防火服の方が活動した感も出て格好良いという雰囲気もあります。

昔は煙の中へ空気呼吸器を装備せずに入って行き我慢するのが当然と言う人もいました。

ですが、それらの煤や火災現場の煙は有害物質の塊であることを忘れてはいけません。

そして火災防御中だけでなく火災原因調査のときにも防護出来ていないと汚染物質は体内に取り込まれ、少しずつ皆さんの体を蝕んでいるのです。

火災現場で発生する汚染物質とは

火災現場では揮発性有機化合物を中心とした汚染物質が火災の燃焼や熱により発生しています。

これらの物質は身体にとって有毒であり健康を害する物質なのです。

火災現場をイメージしやすいのは建物火災かもしれませんが、実際には火災の種別を問わず有害物質は発生しています。

除染の必要性

除染と聞くとNBC災害での除染を思い浮かぶと思います。

有害物質が付着するのは火災現場でも同じです。NBC災害のように除染をする必要があると思いませんか?

火災現場で「除染とかやってられるか」って思うかもしれませんが除染は隊員の健康を守るために必要なことなのです。

イギリスで行われた調査では、一般労働者と消防士を比較すると消防士は癌になる確率が4倍以上との結果も出ています。

今は浸透していませんが今後火災現場での除染が当たり前のように広まると、除染を行っていない消防本部は職員から訴えられるかもしれません。

欧米ではすでに火災現場での除染を実施していて、特にアメリカでは火災現場で洗剤を使用して除染を行っています。(州による)

除染の流れ

海外のサイトに除染の流れが書かれていました。

除染は現場で行う除染と帰署後に行う除染に分かれています。

現場で行う除染

基本的に面体または防塵マスクを装着して汚染物質を吸わないようにする。

除染場所を2箇所設定

  • 防火衣等の汚れを落とす場所
  • 水的除染をする場所
STEP
防火衣等の汚れを落とす

隊員2人組となって、お互いの装備に付着している汚れをブラシ等で落とす。

この際に汚れが舞ってしまうので面体着装か防塵マスクの着装をする。

STEP
放水で洗い流す

ある程度の汚れを落とすことが出来たら、水的除染を行う。

よほど現場に近くない限り機関員は汚れていないので、機関員がホースを伸ばしガンノズル等で隊員を洗う。

石鹸等があればベストだが、洗い流すだけでも効果はある。

STEP
洗った防火衣等をビニール袋に入れる

濡れたまま車両に積載して帰るわけにはいかないし、汚染されているので、ビニール袋に入れて帰署する。

帰署中に次の災害が無いとも限らないので、乱雑には入れないこと。

STEP
着替えてから車両に乗り込む

ここが一番難しいことであるが、活動服も着替えることが出来たらベストです。

特に靴の裏は汚れが残っていることが多いので、気をつけたいポイント。

召集隊員に現場へ持参してもらえると助かりますね。

帰署後の除染

帰署後は現場で洗浄した防火衣等を再度洗って次の災害出動に備えます。

その後すぐにシャワーを浴びて汚染物質を完全に洗い流しましょう。

間違っても汚れたまま署内をウロウロしないでください。署内に汚染が広がります。

署長や中隊長は火災の報告書の作成なんかよりも隊員の健康を守ることの方がよっぽど重要であることを認識して、シャワーをするよう命じないといけません。

訓練中の安全管理よりも必要度合いは高いです。

隊員のシャワーと平行して空気呼吸器や車内の除染を進めます。これは召集隊員や現場に行っていない隊員が行います。

当然防塵マスクの着装は言うまでもありません。

現場に持参した物はすべて汚染されたと判断して、除染を行いましょう。

特にスマホなどは素手で画面を触り、その手で食事や報告書の作成などをするので、しっかり除染をする必要があります。

活動服も署で洗濯します。汚染されたままの活動服を家へ持ち帰り洗濯すると家の洗濯機が汚染されたり、家族が汚染物質に触れることになるからです。

コインランドリーの使用はやめましょう。

除染への問題点

  • 一番は除染をすることの理解や必要性が広まっていないことです。
  • 洗浄した防火衣や装備を乾燥させるスペースが無い署もあるでしょう。
  • 除染をしっかり行うと時間もかかるので、隊員が多いと大変。
  • 全員が同じ認識を持っていないと、気にしない人が署内を歩き回る可能性がある。

この記事を作成したきっかけ

同期からの電話

現役を退いてからも交友のある同期から1本の電話がありました。

その第一声が「クマ・・・俺はもう現場に出れなくなったよ」だったのです。

彼は同期の中でも運動神経も良く、若い頃は全国救助技術大会でも全国大会へ出場するような消防士でした。

今では消防局の救助隊を率いる救助隊長で非番は毎日10km以上ランニングしているバリバリの消防官。

そんな彼が何故、現場に出れなくなったのか聞くと・・・肺ガンになってしまったから。

タバコも吸わないし、仲間が居ても喫煙所には近寄らなかった彼が肺ガン・・・

彼は「火災現場に長年出場し続けて有害物質を吸っていたのが原因かもしれないな・・・」と呟きました。

「今まで健康だったから気にしてなかったけど、あの煙や煤は有害物質が大量に含まれている。」

「しかも火災現場だけでなく、防火服や活動服に付着した物質が車両や署内に持ち込まれているんだ。」

「当然自分が面体を着けていないときもあったし、皆知らないことだから消防局を責めるつもりはない・・・だけどこれからは俺と同じ思いをさせない為に教養をしていくよ。
クマは汚染について記事にしてくれないか。」

そういう経緯があったのです。

火災現場の煙などは漠然と体に悪そうだという認識はあると思いますが、それらの汚れが現場だけでなく車両や署内ひいては自宅や家族までも汚染させているのです。

自分の命は自分で守るではありませんが、健康で長生きしたいなら火災現場は汚染されていると認識して、活動後はしっかり除染を行いましょう。

この記事を読んでくれる消防関係者がどれぐらい居るかは分かりませんが、1人でも多くの健康を守れたら幸いです。

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