煙の怖さ
火災で亡くなる方の多くは逃げ遅れて焼かれるよりも、有害な煙を吸って亡くなることが多いことを知っていましたか?
煙の毒性
火災で発生した煙には、炭素の粉である煤(すす)や二酸化炭素などが含まれていて、高温になっています。この高温の煙を吸い込むことにより、気道や肺などが熱傷し呼吸困難をおこします。
また、不完全燃焼により一酸化炭素(無色無臭の有毒ガス)などが発生して、一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結合するため、体内に酸素が運ばれなくなって呼吸困難になり、体の自由がきかなくなるのです。
これらの症状は煙を吸った一瞬のうちに起こり、あっという間に死に至るケースが少なくありません。
煙の速度
煙の速度はどれぐらいか想像できますか?
煙はゆっくり漂っているイメージもあるかもしれません。しかし、煙の速度をあなどると大変なことになります。
垂直方向つまりビルなどの上階へのスピードは毎秒3~5メートルです。人間の歩く速さがだいたい毎秒約1メートルと言われているので、階段室などを上がってくる煙がいかに速いか想像できると思います。
しかし水平方向の煙は毎秒0.5~1メートルなので慌てさえしなければ容易に避難できますね。
煙による視界不良
火災の火元から発生した煙は火元を離れるにつれて、どんどん温度が下がってきます。温度が下がるということは不純物を多く含む煙はどんどん下がってくるのです。
どんどん下がってくると視界は少しずつ奪われていくことになるが想像できますか?しかも火災の煙は不純物を多く含んで黒く視界なんてほとんど効きません。
暗くて視界がないと人間は方向感覚を失ってしまいます。例えば普段の生活でも突然夜中に停電などになると何も見えないし動きにくいですよね。停電ぐらいだとスマホのライトで照らせば良いですが、黒煙だとライトも役にたたないのです。
突然火災に巻きこまれ、視界も効かないなかパニックになり有害な煙を吸ってしまう。これが避難に失敗する要因なのです。
火災に巻きこまれた時の避難
もしも、火災に巻きこまれてしまったらどうしますか?最も大切なことは適切な方法で避難することです。
お・は・し・もの約束
これは昔から幼稚園や保育園、小学校などで習ったことや聞いたことがあるかもしれません。子どもたちに避難する時の教訓として約30年前ぐらいから教育安全指導のガイドラインにあるそうです。
- お 「押さない」
避難している時に前の人を押さない。 - は 「走らない」
コケたら怪我だけで済まないかもしれません。 - し 「喋らない」
喋って煙を吸ってはいけないし、先生の指示が聞こえません。 - も 「戻らない」
一度避難を開始したら忘れ物をしても避難を優先しましょう。

煙からの避難
火災に巻きこまれたら、火と煙から逃げることになります。
しかし、火よりも煙の方が圧倒的に速度が速いので煙からの避難を紹介します。
- 可能な限り水平避難する
- まだ視界が効くなら早く通り抜ける
- タオルやハンカチを濡らして煙を直接吸わないようにする
- 姿勢を低くして避難
- 壁つたいに避難
煙は横方向への速度が遅いので、可能な限り横方向へ避難しましょう。
走らない約束ですが、視界が効いて短い距離なら息を止めて通り抜けましょう。
タオルやハンカチがないなら袖を口や鼻に当てる方法でも良いです。
煙は天井からたまってどんどん下がってきます。床に近い場所はまだ煙が少ないので姿勢を低くして避難しましょう。
視界が悪くなり、周りが見えなくなっても壁に手を当て、壁つたいに避難することで方向感覚を失いにくいです。
避難の心得
お・は・し・もの約束でもありますが、避難したら燃えている建物には戻らないことが大切です。忘れ物をしたと言ってもそれは何でしょうか?命よりも大切な物でしょうか?まずは自分の命を大切にしましょう。
次に避難する時の服装にこだわらないことです。部屋着のままだからこの格好で避難できないとか思わずに、とにかく避難を優先してください。
普段からの心構え
マンション
マンションなどに住んでいる方は、ベランダに避難はしごが設置されている場合があります。自分のベランダになくても他の場所に設置されていることがあるので、確認しておきましょう。
また、はしごが降りてくる場所に洗濯機や物置を置いておくと避難の障害になるので置かないでください。
ベランダの仕切板は破壊して隣に避難できるようになっています。物など置いてませんか?
住宅用火災警報器
住宅用火災警報器が設置義務になってからずいぶんと経ちますが、みなさんの家には住宅用火災警報器が設置されてますか?設置されててもちゃんと機能しますか?
自分たちの命を守るための機械です。設置してない方は設置して、してる方はきちんと鳴るか点検してみましょう。
宿泊する時
大きなショッピングモールなどと違ってホテルや旅館などは入り組んでいる場合もあります。もしも火災に巻きこまれた場合を考えて避難経路を確認しましょう。
まとめ
火災で怖いのは火よりも煙です。
避難する時は煙をいかに吸い込まないようにするかが生死を分けるポイントです。
「お・は・し・も」の約束を子供だけでなく大人もしっかりと心構えとして、もしも火災に遭遇したとしても適切な行動をとって避難しましょう。