救助工作車に積載されているタイガーエアソー(エアーソー)
小学生の庁舎見学では必ずエアソーについての質問があります。
(どうやら教科書に載っているらしい)
救助隊なら使い方を知っていて当然ですが、消防隊や救急隊だと使い方を知らないこともあるでしょう。
この記事では、救助資機材のタイガーエアソー(空気鋸)の使い方や注意点などを解説します。
皆さんのレベルアップに繋がれば幸いです。
鋸:ノコって読みます。
エアーソーでもエアソーでも正解です。本(教本)によって呼び名が違いますが同じ資機材。
この記事では以下、エアソーで統一します。
【救助資機材】タイガーエアソー(エアーソー)
黄色と黒のカラーリングで虎を連想させます。
タイガーエアソーは救助工作車に積載しなければならない資機材のひとつです。
救助省令で規定されている救助隊別保有資機材一覧では別表2の「切断用器具」
圧縮空気の力を利用して装着したノコを前後に動かし、対象物を切断します。
通常は空気ボンベを使用 空気を使用するのでエンジンカッターなどのように作業環境の悪化につながらない。
鉄材やステンレス鋼、アルミといった金属から木材のような柔らかい物まで切断できる携帯用鋸で、使用した空気を刃先に吹き付けることから火花をほとんど発生しないのが特徴です。
要救助者の近くを切断する際、エンジンカッターのようにガンガン火花を出すことが無いので、エンジンカッターに比べると要救助者に与える恐怖感は低いと思います。
火花がほとんど出ないってだけで、出ない訳ではないため爆発危険がある現場では使用できません。
タイガーエアソーのスペック
サイズ | 全長425mm |
重量 | 2.7kg |
空気消費量 | 毎分180リットル |
ストローク | 45mm |
オイル量 | 2cc |
連続使用可能時間 | 3時間 |
目に見えるオイルは約10分で無くなりますが、ロープに染み込んだオイルが残っているので3時間使用しても大丈夫です。
3時間も使用したら空気ボンベが大量に必要になるので他の切断器具を選定した方が良さそうですけど・・・
水中でも使える
タイガーエアソーは電気や油圧などを使って動く資機材ではないため、水中でも使えます。
使えるといっても空気がボコボコ出てくるので切断時の視界は悪い。
潜って使用したのを見たことがないため、陸上から手が届く範囲が使用の目安と思っています。
納入の際に担当者に聞いた話によると、潜って使っても大丈夫とのことでした。(圧力調整器は水中で使えないため、ホースの届く範囲)
サイレンサー部分を開放していないと、本当に見えにくいみたいなので、水中で使用する場合は必ずサイレンサー部分を開放して使用する。
使用時に必要な資機材
タイガーエアソーは圧縮空気を利用して動作するためエアソー単体では使用することが出来ません。
そのため以下の資機材を同時に使用します。
- 空気ボンベ
- ナイロンコイルホース
- 圧力調整器
- 替刃(ブレード)
- 専用オイル
エアソー準備!って言われたら消防隊はとりあえず空気ボンベと資機材保護用の毛布を持ってきましょう。他はセットにして置いてあるので救助隊が準備すると思います。
替刃には種類があり18、24、32の3種類。この数値は1インチ(2.54cm)あたりの歯数。
切断する物の厚さにより刃を交換して使用することになります。
替刃の種類 | 切断する物の厚み |
18 | 5mm以上 |
24 | 2~5mm |
32 | 2mm以下 |
厚みがどれぐらいあるのかパッと見で分からないと思うので、基本的には切断する物の厚みに対して刃の山が2つ以上当たるブレードを選択します。
切断物に対して刃の山が少ないと、すぐにブレードが破損するので注意。
エアソーは引き刃で使用します。
海外製なのに珍しいですよね。
タイガーエアソーの使い方手順
タイガーエアソーの使い方は覚えてしまえば簡単なので、この記事を読んだあとは実際に資機材を触ってみましょう。
圧力調整器側とタイガーエアソー側に分けていますが、慣れれば1人で出来ます。
基本的なことですが資機材の設置場所には保護用の毛布などを敷く。
圧力調整器側
圧力調整器と空気ボンベを接続する前には定番の動作をします。
Oリングが外れていたり切れていたりしないか確認。
空気呼吸器と同じようにエアーを吹き付けてゴミを飛ばす。
調整器の圧力調整ネジが緩んでいることを確認する。(ネジが緩んでいる状態が正常)
調整器と空気ボンベを接続する。
圧力調整器にナイロンコイルホースを接続する。
接続は押し込むことで完了。
タイガーエアソー側
タイガーエアソーのオイルが無くなっていないか確認する。
約2ccのオイルが入り、オイルケース内に無くても2時間は使えるので心配不要ではある。
本体横に取り付けられている6角レンチを使用してサイレンサー部分のネジを緩める。
緩めたら選定したブレードを差し込んで締め付け。
対象の厚さに刃の山が2つ以上かかる物を選ぶこと。
厚手の革手袋などをしていると6角レンチが取り出しにくいので、革手袋を外した方が早いかも。
安全のため速度調整ネジをフリーにしてエアーが来てもいきなり作動しないようにしておく。
時計回りに回せば動きが遅くなり、最終的に止まる。
エアソーにナイロンコイルホースを接続する。
押し込むことで接続完了
接続完了したら
空気ボンベの即止弁を開放して残圧を確認する。
圧力調整器はニードルバルブなので、ねじ込むことで圧力がかかる。
時計回りにバルブを回して使用圧力の0.7MPaに設定。
速度調整ネジがフリーになっているので動作側に回し、ハンドルを握り作動点検を行う。
作動点検は周囲に人が居ない方向へ向けて行うこと。
作動点検で異常がなければ切断開始!
切断時は可能な限り本体側の根本で切断すること。(刃がブレて折れる危険性がある)
タイガーエアソーまとめ
- 空気ボンベなどの圧縮空気を利用して動く
- 火花が出にくい
- 水中でも使用可能(浅瀬)
- 刃の選定は山が2つ以上当たる物
- オイルが見えなくなっても染み込んだ分があるので大丈夫
- 特別救助隊以上の車両に積載されている
エアソーで切れない物
- ガラス
- 鋳鉄、鋳銅
- マンガン鋼、焼入れされた鋼材(ベアリング、スプリングなど)
7MPaで使用するのが一番効率が良い。
6.5MPa以下になると極端に作業性が低下するが、7MPa以上に上げてもほとんど変わりません。
接続は空気ボンベ側から順にしていくと流れも分かるのでオススメです。
即止弁を開放して急に動かないように圧力調整器のネジが緩んでいることと、エアソーの速度調整ネジがフリーになっていることを確認すること。
人員が多い消防本部(局)であれば救助隊だけが知っておけば良いでしょうが、少ない消防本部だと全員が取扱い方法を知っておく必要があります。
この記事にたどり着いたってことはタイガーエアソーの取扱い方法を知りたかったからだと思うので、使い方の流れについてイメージ出来たら実際に訓練してみましょう。
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